大和の冒険 第十九 話 透明人間

【今昔物語集外伝 大和の冒険 第十九話 透明人間】をYouTubeにアップしました。

YouTubeへアップしている内容は、YouTubeのガイドラインに沿った作風にするため若干表面を和らげています。

原作は動画の下に公開しておりますのでどうぞご覧ください。

また、紙芝居の舞台イベントなども受け付けています。一人でも多くの方に今昔物語を知って頂けたら幸いです。

第十九話 透明人間 原作

今昔物語集外伝 大和の冒険

今は昔、ここは平安時代の京都の街です。

大和は長介と共に大晦日の夜、彼の友達のところへ行って楽しく話し合い、夜中になってから急いで帰るところでした。堀川橋のところに来ると、橋の向うから行列が松明を灯してやってきます。

「おや、偉いお方の行列だよ。橋の下にかくれて道をあけよう」

長介と大和が橋の下に隠れていると、行列は賑やかに騒ぎながら橋を渡って行きます。どんな方かしらと覗いてみると

「うわー!すげー!お化けの行列だ!」

吃驚してぼんやりと立ってしまいました。

「お?人間臭いぞ。どこだどこだ!いたぞ、おや、子供もいるぞ」

二人は捕まってしまいました。

大晦日に鬼に出会うと、髪の毛しか残らないと言われます。もうこれで命はおしまいかと、長介は観音様に一生懸命お助け下さいと祈ります。

「こいつらは、友達のところへ行って、別に悪いことはしていないから命だけは助けてやろう」

鬼たちは二人にペッペッと唾を掛けて、

「これで我々のことを喋れぬわいわっはっはは」

笑いながら松明をかざして去ってゆきました。

二人は助かったので大喜びで家に帰りました。鍵が閉まっているはずなのに、なぜか二人は家の中に居ます。

「姉さん、ただいま」

姉さんは気が付く様子もなく

「ほんとにあの二人はどこをほっつき歩いているのかしら、大晦日の夜は鬼の行列が練り歩くというのに物騒だわ」

「姉さん俺だよ。帰ってきたんだよ」

誰も二人に気が付かない様子です。顔を見合わせ、

「俺たちは、透明人間にされてしまったんだ!」

家にいても誰も気づいてくれないので、六角堂の観音様にお参りしてお願いをすることにしました。

「南無観世音菩薩、私は何も悪いことはしておりません。どうか元の体に戻してください、お願いします」

何日も泊まり込んで祈願を続けております。おなかが空くとお供え物を食べるのですが、誰も気づきません。

丁度21日目の夜中に長介の枕元に尊いお坊様が現れました。

「お前たちが一生懸命に拝むので、観音様がお助け下さるから、明日の朝、この寺を出て行って最初にあった人の後について行きなさい」

それだけ言うと、すーっと消えてしまいました。

朝になって門を出たところで出会ったのは、大きな体の牛飼いの男でした。

「やあ、お前たち、わしの後からついてこい」

「わ、この人には私たちが見えたのだ。もう透明人間は治ったのかしら」

牛飼いの男はどんどん歩いて大きなお屋敷の前に着くと、

「さあ、中へ入れ!」

扉が閉まっているのに長介の手を引っ張ってすっと中へ入ってしまいました。

お屋敷の中を平気で土足で入って行くのに誰も

「お前は誰じゃ」

と見とがめられません。

「やっぱりまだ透明人間のままかしら、それではあの牛飼いも透明人間だわ」

ついて歩きながら悲しくなってしまいます。

奥の部屋に病気の姫が寝ていました。牛飼いは枕元にデンと座り、向う側に座るように二人に命じます。

ところが看護している女官も後ろの両親も三人には全く気が付かないのです。

牛飼いは懐から槌を取り出して長介に渡し、

「姫の頭を叩け!腹も力一杯叩け!」

「えっ、こうでしょうか」

長介が恐る恐る叩くと姫は、

「ギャーアアアー!」

跳ね上がって苦しみます。もはや命はないのでしょうか!

そこへ頼まれてやってきた修験者が

「火界の呪」という病魔退散のお祝詞を大声で上げ始めました。

「ノウマク サンマンダ バサラダン センダンマカロシャダヤ ソハタヤ ウンタラタ カンマン  ノウマク サラバタタギャテイビャク サラバボッケイビャク」

とたんに牛飼いはあわてて逃げて逃げて、逃げて行ってしまいます。長介と大和の体に「火界の呪」の火の粉が飛んできてボウボウと火柱を上げて燃え始めました。

「火界の呪」が終わると、すっかり病気が治った姫がにこにこと座っています。

火柱が消えると裸ん坊の長介と大和がみすぼらしく座っていたので、周りの人々はびっくり仰天。行者が、

「この者たちは、晦日の日に鬼に出会って透明人間にされていたのじゃが、観音様の御利益で救われたから、着物を着せて逃がしてやりなさい」

大和は、

「自分たちは運よく見える体を取り戻せたけど、もしかしたら取り戻せないまま街をうろついている透明人間もいるのじゃないかしらー」と思いながら家へ帰って行きました。

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