大和の冒険 第十二話 冥土の鬼

【今昔物語集外伝 大和の冒険 第十二話 冥土の鬼】をYouTubeにアップしました。

YouTubeへアップしている内容は、YouTubeのガイドラインに沿った作風にするため若干表面を和らげています。

原作は動画の下に公開しておりますのでどうぞご覧ください。

また、紙芝居の舞台イベントなども受け付けています。一人でも多くの方に今昔物語を知って頂けたら幸いです。

第十二話 冥土の鬼 原作

今昔物語集外伝 大和の冒険

今は昔。少年大和は中国のスイという国で、学者のニンセンと一緒におりました。二人は馬で県庁へ向かっています。

「私は仏教の冥土という所の鬼を見たいとずいぶん勉強したが、まだ見たことはないよ」

その時、荒野の向うから土煙を上げて騎馬団がやってきました。

「あの人達は、時々ここですれちがうのだが、平気だよ」

騎馬団の大将が急に止まりました。

「やあ、ニンセン、君とは時々すれ違うね。君を尊敬しているので友達になりたい」

「あなたは一体どなたですか」

「わたしは鬼だ。名前はケイという。今は冥土で高級官吏をやっている。」

「冥土とはどんな国ですか」

「冥土の王様は霊王と言われる。霊界からこの世を治めているのだ」

ニンセンは過去の勉強が実ったことを知りました。

「君と付き合うとどうなるの?」

「君が災難や危険に逢いそうな時にはそれを無くすることが出来るよ」

「それは、ずいぶん便利だな、じゃあ、友達になろう」

「それでは家来を一人つけてやる。未来のことが解る奴だ」

家来になったお供は、

「今日は夕方から大雨になりますから雨具を用意してください。明日県庁に行くと、こんな仕事を頼まれるので準備してください」

などと教えるのでとても便利でした。

ニンセンにはお金持ちの息子でブンポンという弟子がおりました。

「内緒の話だが私は冥土の偉い鬼のケイと友達だ。ケイが言うには、『鬼というものは、何時もおなかを空かしている。ところがもし人間の食事を一食食べれば一年間は空腹を感じないのだ。だから、大方の鬼は人間の食物を盗んで食べるのだ。わたしは盗みをしたくないのが、もし君が一食を捧げてくれれば受けようと思う』と言ったよ」

「ええっ、それではわたしが鬼に食物を捧げましょう」

ブンポンは河原に大きな幕を張りむしろを敷いて、沢山のご馳走を用意させました。すると、一陣の風が吹き、ケイが二人の客を連れて現れ、幕の中に入り座ります。

「ワッハッハッハ、実に旨い。こんなご馳走は久しぶりだ」

「ケイ様どんどん召し上がってください。」

「いやいや、大変美味しい。君たちの気持ちを忘れないぞ、ムシャムシャ」

笑いながら豪快に食べています。

三人が食事をしている間、ケイの家来たちは外で待っていました。

ケイたちが食べ終わると家来たちは馬から降りて代わる代わる席について食べ始めたのです。

ブンポンがお土産をさし出しました。ケイは受け取って、

「ああ、わたしは沢山ご馳走になった。実に嬉しい。忘れないぞ。わっははは」

そう言って笑うとさっと消えてしまいました。

それからしばらくして、ニンセンが重い病気になりました。

「ああ、苦しい、体がよじれるほど痛い。ああ、苦しい」

大和はどうしてよいか解りません。ケイが残したお供が来て、

「この病気は私にもわかりません。ケイ様に尋ねてきます」

返ってきた答えは、

「ケイ様にも解らないので、来月に大山で鬼の集会があるからそこで詳しく聞いてみようということでした」

やがてケイがやってきて、

「君の病気だが、鬼の都で書記が一人欠員になってね、君は学問に優れているので、君を書記にしようということになったのだ。そのために君を霊界は召すことになったのだ。それが文書として提出されていたなら、きみはかならず死ぬことになる」

「それを逃れるにはどうすればいいのでしょうか」

「君の本来の命は六十余才まである。無理やりに死なせようとしている。わたしはこれを許してくれと願い出ようと思うのだ」

「君、鬼の王様に頼みたいと思うなら、すぐに出かけなさい。大山の東の小山を越せば平らな草原がある。そこが鬼の冥土の中心地の都だから、そこへ行って大王に頼んでみなさい」

ニンセンは病気なのでブンポンと大和が出掛けることになり、沢山の土産を持って、大山に出かけて行きました。

東の尾根を越えて、もうひとつ小山を越した先で広い平原に出ました。平原に立っていると、見る間に情景が変わって立派な構想宮殿が現れました。

ブンポンと大和は呼び出されて土産を差し出して、

「大王様、私たちはニンセンの使いでやって参りました。どうかニンセンの命を取らないようにして下さい」

「うーんニンセンの家来か。なるほど帳簿に死ぬ予定が記されておるな」

「一度書類が出てしまうと難しいなあ、ハンコを押して提出したからな」

大王達は帳面を取り出して話し合っています。

二人はいい返事をもらうことはできなくてがっかりして帰ってきました。

再びケイが来て、

「ブンポンが来て、鬼の十王たちに、君の寿命をのばす訴えをしていたが、まだよくならないなら、それ完全に死ぬね。すぐに仏像を造りなさい」

「わかりました。わたくしが早速ニンセン様の寝ている堂の西の壁に、大きな仏像を画き上げさせます」

描かれた仏像は薄目を開いてニンセンを見ています。

「ああ、仏像に見つめられて何だか元気になってきたようだ」

ケイが来て、

「君、これで死から逃れることができたよ。君の死を決めた文書が消えてしまったのだ」

「地獄の文書でも仏は消せるのですか」

「仏は、偉大である。死ぬ予定の文書も仏の前には必要がない。仏を敬い奉れば福徳も多い」

「そうですか、お蔭で元気になりました。これからは仏教の勉強をします」大和はそれを聞いて人の生死は冥土で決められるらしい、がそれよりも仏の力が大きいことを知りました。

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