大和の冒険 第六話 イッカク仙人

【今昔物語集外伝 大和の冒険 第六話 イッカク仙人】をYouTubeにアップしました。

YouTubeへアップしている内容は、YouTubeのガイドラインに沿った作風にするため若干表面を和らげています。

原作は動画の下に公開しておりますのでどうぞご覧ください。

また、紙芝居の舞台イベントなども受け付けています。一人でも多くの方に今昔物語を知って頂けたら幸いです。

第六話 イッカク仙人 原作

今昔物語集外伝 大和の冒険

今は昔、インドにサーマという王様の国がありました。

少年大和はサーマ王の元で暮らしておりました。

国の東北に高い山がそびえ一人の仙人がおりました。額に角が一本生えているのでイッカク仙人と呼ばれています。千年も修行を積んだので空を飛び、地にもぐり、鳥や獣と話せて、ものを飛ばす神通力も身につけていました。

あるとき仙人は外出先で大雨にあい、道がぬかるんでいたので転んで足をくじいてしまったのです。

「雨が降れば道も悪くなって転んでしまう。頭に来たぞ!雨を降らせるのは竜王だ。もう雨を降らせさせないぞ。よーし、インド中の竜王を捕まえてビンに詰め込んでもう雨を降らせない」

大勢の竜王達は小さなビンの中で嘆いています。

「ああ苦しい!一角仙人にビンヅメされてはどうにもならないよ」

そして広いインドの国々では一滴も雨が降らず、日照りが続き作物がとれなくなってしまいました。

「一体どういう訳だ。雨乞いの祈りも効かないし、えらいことになってしまった」

国王達が相談しています。

これを聞いたサーマ王のお妃は、

「この世に雨を降らせるのは竜王の仕事です。こう長い間雨が降らないのは、竜王達が仕事をできないからだと思います。占い師を呼んで竜王達の災難を救って下さい」

 占い師を呼んで聞いてみると、

「ここより東北の山に住んでいるイッカク仙人が、雨を降らせるすべての竜王をつかまえてビンヅメにしてしまったので、雨が降らないのです」

サーマ王はそばにいる大和に向かって呟きました。

「なあ、なにかいい考えはないかなあ」

大和はパッとひらめくものがあり、芸人の部屋へとんで行きました。そして舞姫の手をひっぱり、大広間に戻ったのです。急に王様の前に連れて来られた二人の舞姫は、これも舞台の一つかと思い、魅力的に笑いかけてポーズをとりました。

王様は、

「よし、わたしは良い事を思いついたぞ。いくら尊い仙人でも、美しい女性と歌声にゆだんしないとは限らない。ためしにとびきり美人の舞姫を選び出して、仙人の住む山で心にしみ入るような、歌を歌わせれば、仙人の心がゆるむかも知れない」

集められた五百人の舞姫たちはセクシーな衣装と強い香りの香水を付けて、車に乗せられ深て山奥に向かいました。

 サーマ王は大和に、

「お前も見に行きたいだろう。女の子の姿をしてついて行ってよろしい」

 大和は女装して舞姫たちと山に入りました。

舞姫たちはまるで動くお花畑のように五人、十人と別れて洞穴のそば、木の蔭、谷間などにちりぢりに散っていきました。

そこでしみじみと心にしみる歌を一斉に歌い始めたのです。歌声は山に響き渡り、谷間にこだまして、まるで天人が空から舞い下りて全山を唄声で包んだようでした。

すると薄暗い洞穴から苔の衣を着た仙人が現われました。

「これは、どういうお方たちだ。わしはこの山に住んで千年にもなるが、今までにこんな歌は聞いた事もないぞ。天人が空から舞い降りて来られたか、それとも魔物が来たのか」

「わたしたちは天人でも、魔物でもありません。五百人の舞姫です。この山は、すてきな形をして、あらゆる花が咲き乱れ,水の流れも美しく、そして尊い仙人がいらっしゃるとお聞きして、歌を歌って差し上げようということなのです。おなぐさめしたいとも思っております」

「それは有難い。ちょっとさわってもいいかな?」

「どうぞ、どうぞおさわりください」

「そっか。それでは洞窟に入ろう」

 舞姫は、気味が悪いと思いましたが、サーマ王に命じられているので、洞窟の奥について入りました。

「ああ美しい。抱いてもいいのだな。肌がつるつるして気持ちがいいぞ」

二人は激しく愛し合いました

舞姫は仙人がかたわらに置いた水ビンを見たのです。

「あ、ちょっとトイレへ行ってきます」

舞姫は水ビンを袖に隠して、洞窟の外へ出てさっと投げ捨てて戻って行きました。

外で待っていた大和はそれを拾って、

「このビンを遠くへ投げれば竜王たちが逃げ出せるに違いない」

力いっぱい遠くへ投げました。

「ヤヤ、仙人の呪いが解けたぞ!それ!」

竜王たちは水ビンを食い破って空に登って行きます。見る見るうちに空は真っ黒な雲に覆われて、雷がとどろき稲妻が走ります。ザーッと大粒の雨が降ってきました。

雨は三日、三晩降り続きインドの村や町を潤しました。

舞姫とイッカク仙人は雨が止むまで洞窟の中にいました。

「いつまでもこうしてはいられないので帰りたいわ」

「そうか・・・、それならお帰りなさい」

「こんな山道は歩けないし道順もわかりませんわ」

「ならば道案内をしてあげよう。わしの後からついてきなさい」

歩くうちに今にも切れそうな古びた吊り橋に来ました。

「わたしをおんぶして渡ってちょうだい」

仙人はこの舞姫を心底愛していたので、言うことに逆らえません。

「さ、おんぶされなさい」

橋を渡り終わっても舞姫は、

「もう少し」 

と言って人里に来ても、「もっと」

降りようとはしないのです。そのまま王城まで背負われていきました。道中では見る人たちが

「イッカク仙人が、舞姫を背負って王城に入るよ」

と、あざけり笑いました。サーマ王は、

「せっかくこの国においでなさったのですから大臣に任命します。彼女と結婚して楽しく過ごされてはいかがですか」

「いや、考えさせてくれ」

と仙人は言いました。

大和が部屋に入って行くと仙人は、

「おお、お前は水ビンを空に投げて竜王たちを逃がした子供だな。わたしは千年も修行をして尊い神通力を身につけ、風や森や水と一緒に暮らしていた。

しかし、あの美しく妖しい姫に出会い、今までの千年の苦労と交換しても、いや、すべてをなくしても悔いは無いほどの激しい愛に身をこがした。恋をしたので神通力はなくなった後悔はしていないよ。王様は、あの舞姫と夫婦になれとおすすめ下さったが、わたしにはそんな生活は似合わない。やはり元の山で修業する生活が似合うので山へ帰るよ」

しみじみと言いました。

イッカク仙人が、山へ帰りたいと王様に告げますと、

「では、あなたが思うようにされるといいでしょう」

 言われて仙人は、本来なら空を飛んで帰れるのに、神通力が失われて飛ぶ事も出来ずに、よろめきながら帰って行きました。

影のようにはかない後姿を見た人々はあざわらっています。

けれども大和は仙人の心を思うと笑う気にはなれず、見送っておりました。

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